FRAILTY PREVENTION CONSORTIUM

栄養ケアで切り拓くフレイル予防~健康寿命延伸への挑戦~(ウェルネスダイニング株式会社)

NEWS 2025.6.19

ウェルネスダイニング株式会社は2011年に創業。「からだ想い、家族想いのあったか健康応援団」を企業理念に、全国規模で宅配食事業を展開しています。提供しているのは、自社企画による腎臓病や糖尿病など生活習慣病の制限食に特化した気配り宅配食や、ご高齢の方でも誤嚥しにくく、咀嚼しやすいやわらか宅配食などです。同社が何より大切にしているのが、食の楽しみの提供と、健康を求める人への丁寧なサポートです。万全のサポートを行うため、社内に約20名の管理栄養士が常駐し、宅配食の購入者はもちろん、それ以外のどなたからの相談にも無料で応対しています。
「日本で一番、栄養相談を承る会社」をめざす同社では、単に宅配食を提供するだけでなく、多くの方々に健康になっていただくことが、事業目的の根幹です。だからこそ、提供商品である宅配食に関する問い合わせに限らず、食事全般に関わる栄養相談にも丁寧に応対しており、一人ひとりの健康に寄り添う体制が大変評価されています。
同社は今回、宅配食業界から初めてフレイル対策コンソーシアムに参画しました。これを機に新たに目指すのが、「栄養面からのサポートを通じたフレイル予防と、健康寿命延伸への貢献」です。そんな同社の基本的な理念や事業展開、さらには今後の展望などを、佐々木俊文取締役、楠瀬いずみ事業企画部長、管理栄養士でアシスタントマネージャー兼ウェルネスコンサルタントを務める小田真帆氏から伺いました。

■宅配食と栄養相談を通じて、一人でも多くの人を健康に

JDSC・木﨑淳一郎(以下・木﨑):
はじめに、御社の事業概要や提供されているサービス、その強みなどを教えてください。

佐々木俊文氏(以下・佐々木氏):
主に腎臓病や糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方を対象として、冷凍の『気配り宅配食』をお届けしています。気配り宅配食とは、食事制限が必要な方を対象として、病状に配慮したメニューでつくられる宅配弁当です。そんな当社の強みであり、かつ宅配食事業を支えているのが、正社員として抱えている約20名の管理栄養士です。栄養に関するプロフェッショナルたちが、メニューの考案はもちろんですが、お客様からの栄養相談にもきめ細かく対応しています。相談対応は宅配食の購入者だけでなく、広く一般の方からも受け付けています。いずれもフリーダイヤルで予約不要、相談料も不要。目指しているのは「日本で一番、栄養相談を承る会社」です。あらゆる生活者に寄り添い、サポートできる体制が強みです。

楠瀬いずみ氏(以下・楠瀬氏):
具体的な商品展開としては、まず4種類の『気配り宅配食』があります。糖尿病や血糖値が気になる方向けの糖質&カロリー制限タイプ、腎臓病の方向けのたんぱく&塩分調整タイプ、高血圧・心疾患が不安な方向けの塩分制限タイプ、そして食生活の偏りが気になる方向けの栄養バランスタイプまでを揃えています。ほかにも『やわらか宅配食』『野菜を楽しむスープ食』、そして減塩調味料セットも提供しています。特に、食事に気配りする必要のある方々が、そこに意識を向けることなく、おいしく楽しく食事するという機会を提供することは、とても価値のあるものと考えています。

木﨑:
それはとてもすてきなお考えですね。今後の事業展開については、どのようにお考えですか。

佐々木氏:
生活習慣病に対応した宅配食で対象となるのは、主に40代から60代ぐらいまでの方です。そこからより高齢の方へと対象を広げていき、70代以降の咀嚼や嚥下機能が落ちてきて、食事を取りにくくなっている方向けの『やわらか宅配食』をお届けするようになりました。さらに、今回のコンソーシアム参加を契機として、2025年5月からフレイル予防に資する宅配食を新たに提供する予定です。フレイル・介護予防のためにも、食事・栄養は非常に重要であり、その部分を私たちもしっかりサポートしていきたいと考えています。現状の商流については、受注の95%をエンドユーザーのお客様から直接いただいていますが、今後はご要望があればBtoB領域での取り組みにもチャレンジしていく予定です。

■増えてきたフレイルに関するお問い合わせ

JDSC・阿部祐樹(以下・阿部):
フレイルに注目して新製品開発にまで至ったきっかけは何だったのでしょうか。

小田真帆氏(以下・小田氏):
フレイルに関するお客様からのご相談やお問い合わせが増えてきたのが、何よりの要因です。それもご本人からではなく、ご家族の方が高齢のご両親を心配されてご相談されるケースが多い。健康維持に必要な食生活についてのアドバイスを求められる一方で、ご両親の食生活の偏りを心配して相談される場合もあります。実際にお話を詳しく伺っていると、必要な栄養素が不足しているケースが多いことがわかりました。だからといって、同居されていないご家族がご両親の食事の用意をするのは、現実的には難しい。そこで、私たちなら宅配食の形でソリューションを提供できると考えたのです。

木﨑:
超高齢社会となっている日本では、フレイル以外にも高齢者の方に特有の問題がいくつかありますね。

楠瀬氏:
そのとおりだと思います。これまで取り組んできた『気配り宅配食』をはじめとする商品展開は全て、食を通じて社会問題解決の一助となりたいという思いから開発してきたものばかりです。フレイルもそうですし、今後は社会課題となっている疾病などについても、何か食事面からサポートできないかなどとも考えています。食事を通じて、全ての方の健康を維持していきたいという思いが、企業理念の「からだ想い、家族想いのあったか健康応援団」には込められています。

<左:楠瀬いずみ氏、右:小田真帆氏>

コンソーシアム参加への期待

阿部:
今回、フレイルコンソーシアムに参加していただいた理由は何だったのでしょうか。

佐々木氏:
フレイルへの対応を考える中で、何より留意しているのが「我々はフレイルの専門家ではない」という大前提です。お客様からの相談に対しても、栄養の観点からは対応させていただきますが、できるならフレイル全般についての知識も得たうえでお話できるようになりたい。そのために、コンソーシアムではぜひ学びを広げたり、深めていきたいと思います。また、食の面からのフレイル予防については力になれると思いますが、フレイル予防全般を考えるなら、ほかにもさまざまな領域からのサポートが必要だと思います。コンソーシアムに参加している他分野の企業様とのコラボレーションなどにより、フレイル予防の一助になれればとも考えました。

楠瀬氏:
具体的には3つの取り組み、すなわちフレイル予防における栄養の重要性の幅広い啓発、続いて栄養バランスに優れた食事の提供、さらに介護施設・福祉施設との連携による支援強化も加えて、食事を通じたフレイル対策を推進していきたいと考えています。

小田氏:
管理栄養士が約20名在籍しているとはいえ、フレイル予防を食事だけでサポートするのは現実問題として難しいと考えます。しかし、私たちが培ってきたナレッジを、コンソーシアム参加企業のテクノロジーとうまく融合させられれば、新たな展開の可能性も出てくるのではないでしょうか。食事だけではなく、追加的な取り組みができればとも考えていて、その意味では中部電力さんによるフレイル検知システムの取り組みに注目しています。早期検知から食事による対応の可能性への広がりなども考えられます。

木﨑:
まさに私たちが描き、進めてきた「協創」を一緒に体現していきたいというお考えをお持ちなのですね。私たちは産学官連携の取り組みを推進しており、中部電力さんとの取り組みである電力データフレイルAI検知は、令和7年度に29自治体への導入が決まっています。行政や企業とのコラボレーションについては、御社はさまざまな取り組みをされていますね。

佐々木氏:
当社では、企業や自治体からの共創に関するご相談に対し、常に柔軟な姿勢で臨んでおります。社員や住民の健康維持・健康寿命の延伸といった課題に対し、私たちのアセットである「宅配食」や「栄養相談サービス」をご活用いただくことで、少しでもお役に立てればという想いで取り組んでいます。
今後は、こうした共創を通じて、従業員や住民の健康にどのような効果をもたらすことができたのか、その「エビデンス」の蓄積にも積極的に挑戦していきたいと考えております。
現時点では、食事によるフレイル予防の効果について、十分な実証データが揃っているとは言い切れないのが正直なところです。だからこそ、コンソーシアムに参画し、アカデミアの先生方の知見を取り入れながら、製品のさらなる改善・進化を目指してまいります。

<左:木﨑淳一郎、右:阿部祐樹>

食の楽しみを通じて健康を提供する企業へ

木﨑:
私たちJDSCでは、保健・医療データを活用した自治体の健康課題分析事業を行っています。ぜひ、この事業でも連携していければと思います。

佐々木氏:
昨今では健康経営を意識される企業も増えています。そのような企業様に対して、私たちのお弁当を提供するケースも増えつつあります。一例をあげれば、弊社のお弁当を一定期間食べていただき、健康診断も併用して、健康に関するさまざまな数値の改善状況を検討するような動きがあります。提供された食事による従業員の健康改善効果に、強い関心を感じます。効果測定のためのデータ分析などで、御社と協業できるとありがたいです。

阿部:
弊社にはデータサイエンティストもいますから、予防観点でのデータ分析などでお手伝いさせていただけそうです。

小田氏:
そのようなデータ分析の結果があれば、ぜひメニュー改善に生かしていきたいと思います。今でもお客様からの栄養相談から拾い上げた声をもとに、味覚をはじめとしてさまざまな改善を続けています。これから先、例えば栄養価を基準とした分析などもできるようになれば、エビデンスに基づくメニュー改善に、ぜひ取り入れていきたいと思います。今後の展開としては自治体とも協力しながら、外出の難しい高齢者のところに私たちのほうから出向いて、食事についてのアドバイスなどをできればよいとも思っています。

阿部:
素晴らしいですね。訪問はもちろん、電話などでも生活や栄養指導に関する取り組みであれば、自治体からの受託事業としても展開できるのではないかと思います。昨今、自治体も保健師や管理栄養士などの人材が不足しており、保健指導なども対象者をかなり絞り込みして対応されているところも多いようです。

佐々木氏:
そのような取り組みにも、コンソーシアムを通じて積極的に参加していきたいです。

木﨑:
最後に、事業展開に関する今後のビジョンをお聞かせください。

佐々木氏:
事業の主軸が食にあるのは変わりません。従って、今後も自信を持ってお届けできる宅配食事業を続けていきます。もう一点考えているのが、管理栄養士チームに蓄積されていく知見を生かす方向性です。現在、年間で1,000件以上のご栄養に関する相談が寄せられていますが、さまざまなご相談から得た知見を、広く社会に還元していくのも私たちの責務だと考えています。

小田氏:
管理栄養士としての最終目標は、健康寿命と平均寿命の間の年齢差を少しでも縮めることです。それも、できるかぎりおいしいものを食べて健康を維持していただきたいです。その食事とは五感で楽しむもの、という考えが原点です。だからこそ、私たちは栄養相談を受けたとき、まず「お好きな食べ物は何ですか」と尋ねることから始めます。そこから深堀りしていき、仮に食事制限が必要だとしても、楽しんで食事していただけるサービス提供に努めていきたいです。

阿部:
人としての温かさとプロフェッショナルな視点が見事に両立しており、素晴らしいですね。制限の枠にとらわれず、「食べる楽しみ」を大切にしながら健康寿命を延ばそうとする姿勢は、利用者にとっても大変心強いと思います。そして、その積み重ねられた知見を社会に還元し、一人ひとりが五感で楽しめる“おいしくて健康”な食事を追求し続けるウェルネスダイニングの未来には、大きな期待が膨らみますね。これから、コンソーシアムメンバーとして一緒に取り組んでいきましょう! 本日はありがとうございました。